崩壊したPOA防衛の再構築と、ジョーダン・ウォルシュに託される第3戦の命運
第2戦でシクサーズに97-111と敗れ、シリーズ1勝1敗とされたセルティックス。エッジコム30得点・マクシー29得点という爆発を許した守備の構造的な崩壊を受け、マズーラHCはPOA防衛の根本的な再設計を迫られている。フィラデルフィアで行われる第3戦、「一度死んだ男」ジョーダン・ウォルシュがマクシーの前に立ちはだかれるかが、シリーズの分水嶺になる。
日本時間4月22日にTDガーデンで行われたプレーオフ第1ラウンド第2戦は、セルティックスにとって戦術的な警鐘となった。第1戦の123-91という快勝から一転、97-111での敗北を喫してシリーズは1勝1敗のタイへと持ち込まれた。この結果が示す最も重要なシグナルは、ジョエル・エンビードの長期不在が確定的となったなか、シクサーズが完全にペリメーター特化型のトランジションチームへと変貌しており、セルティックスはPoint of Attack(POA)の防衛構造を根本から再構築しなければならないという現実だ。
第2戦の崩壊を単なるシュートタッチの上振れとして処理することはできない。第1戦ではタイリース・マクシーのシュート14本中12本にコンテストし、フィールドゴール20本中8本(21得点)に抑えることに成功していた。しかし第2戦、ニック・ナースHCが「状況を問わず打ち続けろ(fire it up there)」という指示をバックコート陣に徹底させると、マクシー(29得点・9アシスト)とルーキーのV.J.エッジコム(30得点・10リバウンド)の2人だけで59得点を積み上げた。チームとしての3ポイント成功数も第1戦の4/23(17.4%)から19/39(48.7%)へと急騰し、23本のフリースローと8回のバスケットカウントをセルティックスのディフェンダーに許した。
特に深刻だったのは、背中を強打してロッカールームに下がるアクシデントを経てなお強行出場したエッジコムに対し、セルティックスがサグ気味のカバレッジを最後まで修正しなかったことだ。プレーオフにおいてルーキーが30得点・10リバウンド以上を記録するのは1998年のティム・ダンカン以来の快挙だが、それはセルティックスの守備設定が引き起こした構造的な結果でもある。マズーラHCは第2戦後の会見で「ファウルを伴わないディフェンス(defending without fouling)の欠如」を戦術的敗因として明確に指摘している。ペリメーター陣の疲労とダウンヒルへの迎撃遅れが、数字の上にも滲み出ていた。
この守備の再建を担う存在として、2年目ウイングのジョーダン・ウォルシュが急速にクローズアップされている。今シーズンの彼のキャリアは起伏に富んでいた。開幕当初はローテーション外だったものの守備力を武器に20試合の先発出場を勝ち取り、しかしオールスターブレイク以降は出番を失い、3月には10試合中8試合でベンチを温めた。この時期について、マズーラHCはウォルシュに「お前は一度死んだが、今、息を吹き返した(You were dead in the water and now you're back alive)」という言葉を直接伝えている。
予測ではなく過去のトラッキングデータが示す通り、ウォルシュはマクシーのプライマリー・ディフェンダーとして確かな実績を持っている。昨年11月の対戦でマクシーをシュート1/9・わずか4得点に封じた事実は説得力がある。移動中の機内でジェイレン・ブラウンとフィルムセッションを行い、マクシーの「見えない意図」を分析してきたウォルシュのクイックネスと長大なウイングスパンは、シュートファウルを与えずにコンテストを成立させる上でセルティックスが持てる最も有効な選択肢だ。第3戦でウォルシュが早い時間帯からマクシーのマークを引き受けることができれば、ホワイトやブラウンはエッジコムの3ポイント警戒により集中できる。
POA防衛の問題と並走する補助線として、ジェイソン・テイタムのコンディション管理も目が離せない。昨年4月、マディソン・スクエア・ガーデンでの第4戦で右アキレス腱断裂という重傷を負い、約11ヶ月のリハビリを経てシリーズに臨んでいるテイタムは、第1戦で25得点・11リバウンド・7アシスト(32分)、第2戦でも19得点・14リバウンド・9アシストとトリプルダブル寸前のスタッツを叩き出した。「毎日リハビリに取り組み、まだ状態を上げている最中だ」と本人は語っているが、アキレス腱手術明けという事実は切り離せない。ジョエル・エンビード不在のシクサーズはアデム・ボナやアンドレ・ドラモンドのインサイド生産性が極端に低く、試合のペースは速くなる傾向がある。そのアップテンポな展開のなかで毎試合要求されるトランジション・ディフェンスと肉弾戦のリバウンドは、テイタムへの負荷を着実に積み上げている。第2戦の終盤、2点差(91-89)まで詰め寄った直後に11-0のランを許して力尽きた展開は、チーム全体のガス欠を如実に示していた。
シリーズの大前提として、ジョエル・エンビードの欠場がこの第1ラウンド中に続く可能性は非常に高い。4月9日に虫垂炎の手術を受けた彼はストレングス&コンディショニング・プログラムを再開しているものの、バスケットボールのアクティビティにはまだ戻っていない。これはシクサーズが第3戦以降もインサイドを放棄し、マクシーとエッジコムを軸としたトランジションとアウトサイドシュートに徹してくることを意味する。対するセルティックスは、ヒューゴ・ゴンザレスが右足の骨挫傷から復帰可能とされているものの、プレーオフ強度のローテーションに加われるかは不透明だ。第2戦で3ポイント0/4に終わったペイトン・プリチャードやサム・ハウザーらベンチメンバーの得点力が戻らなければ、シクサーズのガード陣に対抗することはさらに難しくなる。
第3戦で注目すべきは、ティップオフ直後のセルティックスの守備陣形だ。マズーラHCがエッジコムへのクローズアウト距離を詰め、不用意なファウルを回避するポジショニングをどのように修正してくるのか。そして「一度死んだ男」ウォルシュが、どのタイミングでコートに立ちマクシーの前に立ちはだかるのか。相手のスピードと勢いを削ぎ、冷静なハーフコートの土俵に引きずり込む――これがフィラデルフィアに乗り込むボストンの次なる戦術的命題である。