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ジョー・マズーラ体制の内側に残る問い、ラッシュブルック流出が映すスタッフ構造の空洞

ジョー・マズーラの続投が既定路線となった今、焦点は采配批判の是非を超えて「誰がミクロの戦術調整を担うか」という組織構造の問題に移りつつある。タイラー・ラッシュブルックのポートランド行きが現実味を帯びる中、試合終盤の戦術準備と若手選手の育成パイプラインを誰が引き継ぐかが、来季の補強効果を左右する見えにくい変数として浮上している。

5月23日|Celtics Signal JP|読了目安:約 8
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ブラッド・スティーブンスが続投を明言し、解任論が実質的に消えた今、セルティックス周辺の議論が向かっているのはジョー・マズーラの去就ではなく、「ジョー・マズーラ体制の内側で何が機能していなかったか」という構造的な問いだ。そしてその問いに対する最も具体的な回答の一つが、アシスタントコーチ・タイラー・ラッシュブルックをめぐる動向から見えてきた。

ジェイク・フィッシャーの報道によれば、ラッシュブルックはポートランド・トレイルブレイザーズのヘッドコーチ候補として対面インタビューに進んでいる。KGW.comやRealGMなど複数メディアも同様の段階にあることを伝えており、ラッシュブルック、ジェフ・ヴァン・ガンディ、マイク・ウィリアムズらが最終候補者として競合している段階だという(報道ベースであり確定ではない)。

ラッシュブルックが担っていたもの

この流出リスクが単なる人員の欠員以上の意味を持つのは、ジョー・マズーラ自身がラッシュブルックの役割を公言しているからだ。ジョー・マズーラはかつて「昨季、彼は試合終盤のシチュエーション準備を主導し、若手選手の育成でもリーダーシップを発揮してくれた」と語っている。

ここで選手補強の議論とは別の角度から問題を立てる必要がある。スティーブンスが言及した「リム周辺でのインパクト不足」への対処として、外部からの選手補強が議論の中心に置かれてきた。だが今回の材料が示すのは、補強した選手をどう使うか、つまり戦術的な運用の問題も同時に問われているという点だ。そして、その運用を支える内側の仕組みが、すでに揺らいでいる可能性がある。

セルティックスは76ersとのシリーズ第5戦で二桁リードを保ちながら後半に失速し、第6戦・第7戦でも有効な打開策を打てなかった。クリス・フォーズバーグ(98.5 The Sports Hub)は「ジョー・マズーラはスモールラインナップをスターターで試すのが遅すぎた。第7戦でやることを第6戦でやるべきだった」と批判した。試合終盤の戦術準備を担っていた人物が組織を離れる可能性が高まっている局面で、この種の問題が再び起きた際の対処能力がどうなるかは、見えにくいが重要な問いだ。

フロントが評価する選手と、出番が来なかったシリーズ

スタッフの権限委譲の問題は、若手選手の起用法とも重なっている。スティーブンスはシーズン終了後の会見で、ルーキーのヒューゴ・ゴンザレスについて「我々が前進する上で不可欠な部分を担っている」と評価し、「20歳にしてチーム最強クラスのフィジカルを持ち、大舞台の瞬間に打ち勝てる身体能力がある」と明言した(SI.com報道)。

レギュラーシーズン中、ゴンザレスはジェイレン・ブラウンに次ぐチーム2位の累積プラスマイナス(+246)を記録していた。にもかかわらず、76ersとのシリーズでゴンザレスが実質的なプレータイムを得たのは、試合の行方がほぼ決した第7戦になってからだった。ルカ・ガルザすら起用されないまま、ビッグマンのローテーションは機能不全に陥り、ローテーションが極端に絞られたことで主力の疲労が蓄積するという悪循環が生じた。

ジャック・シモーヌ(Boston Sports Journal)が指摘したように、「なぜゴンザレスが出場機会を得るまで第7戦まで待たなければならなかったのか」という問いに対して、明確な答えはまだ出ていない。フロントオフィスがポジティブに評価している素材を、ヘッドコーチが大事な場面で使えない構造的なバイアスがあるとすれば、それは選手補強では解決しない問題でもある。

オフェンスの処方箋をめぐる認識の差

スティーブンスが会見で「リム周辺でより多くのインパクトを与えること」を最優先課題に挙げたのは、データの裏付けがある。2025-26シーズンのセルティックスはリムから5フィート以内でのシュート試投数が1試合平均21.9本でリーグ最下位だった。3ポイント試投数はレギュラーシーズンに平均42.1本(リーグ4位)だったが、76ersとのプレーオフでは平均46.1本まで増加し、それでもワイドオープンの3ポイントを26.3%の確率でしか決められなかった。

ジョー・マズーラはこれに対し「プレースタイルはロスターよりも先に来るものではない。今いる選手の強みを活かす必要がある」というスタンスを崩していない。この立場自体は一定の合理性を持つが、シュートが入らない時間帯に試投数を担保し続けることで確率の収束を待つというアプローチが、終盤の失速を繰り返す要因になっているという批判は根強い。

ペイトン・プリチャードはプレーオフを通じて最も効率的なピック&ロールのボールハンドラーとして機能していたにもかかわらず、苦境に陥るたびにジェイソン・テイタムへのアイソレーションという判断が繰り返された。テイタムのアイソレーション頻度はプレーオフで過去10年最多水準に達しており、ピック&ロールのハンドラーとしても非効率な結果に終わった。シモーヌは「ジョー・マズーラはシュートが入るかどうかはコントロールできないが、どのようにシュート機会を作るかはコントロールできる」と書いている。この指摘はロスターの問題ではなく、采配の問題を指している。

続投決定のその先で起きていること

スティーブンスはジョー・マズーラの続投を支持し、その点は揺るいでいない。NBAのCOTY(最優秀コーチ賞)の受賞予測市場でもジョー・マズーラが圧倒的な本命として評価されており、レギュラーシーズンにおける手腕の評価は高い。

だが過去のCOTY受賞者の軌跡は、一つのパターンを示している。ドウェイン・ケイシー(2018年)、マイク・ブーデンホルツァー(2019年)、モンティ・ウィリアムズ(2022年)らは、レギュラーシーズンで評価されながらも、プレーオフで対戦相手の的確な調整に対してシステムを変えられず去っていった。ケイシーはCOTY受賞と同シーズンに解任されている。ジョー・マズーラが今まさに同じ入り口に立っているかどうかは、今後の判断で変わりうる。

変化の遅さについて、ジョー・マズーラ自身は第7戦敗退後に「シリーズで何が変わったかといえば、ジョエル・エンビードが復帰したことだ」と述べた。ジョエル・エンビードは虫垂炎手術から第4戦で復帰したが、足首・股関節の負傷を抱えて機動力は著しく低下した状態だった。それでも、セルティックスはシリーズを通じて有効なカウンターを打てなかった。「相手の手札が完全に明かされてから動く」という受動的なパターンは、コーチングスタッフの再編でどこまで変わるのかが問われることになる。

これから意識しておくべきポイント

ラッシュブルックのポートランド行きが正式に決まるかどうかは、現時点では確定していない。ただ、それとは独立して「誰がその役割を引き継ぐか」という問いは残る。ジョー・マズーラが試合終盤の戦術準備や若手の育成パイプラインを自ら担うのか、あるいは異論を唱えられる経験豊富なアシスタントを外部から補強するのか。この人事の方向性が、ジョー・マズーラ自身が自分の弱点をどう評価しているかを映し出す。

もう一つ注視すべきなのは、今夏の選手補強が戦術的にどういう意味を持つかだ。スティーブンスが言及した「リムへのインパクト」をもたらす選手が加わったとして、ジョー・マズーラがその選手をプレーオフの緊張した場面でどう使うか。補強と采配は別の問題として切り離して見ておく必要がある。ゴンザレスが来季のプレーオフローテーションに組み込まれるかどうかも、その指標の一つになる。