バントン放出で「柔軟性」の実体が見えた。サマーリーグ初戦で確認すべきもの
ダラノ・バントンの放出でセルティックスはラグジュアリータックスラインを約170万ドル下回り、ロスターは14人に。ミッチェル・ロビンソン獲得で生じたハードキャップを踏まえると、フロントが語る「柔軟性」は大型補強の余地というより、最後の1枠をどう使うかという運用判断にまで降りてきた。7月10日のサマーリーグ初戦ではその審査が本格化する。
7月9日(日本時間では10日早朝)、セルティックスはダラノ・バントンをウェイバーにかけた。Boston Globeのアダム・ヒメルスバックが報じたこの動きで、ボストンはラグジュアリータックスラインを約170万ドル下回り、標準契約のロスター枠は14人になった。金額だけ見れば280万ドルの整理で、派手な話ではない。ただ、この動きが起きた順番とその背景を追うと、フロントが今どのレベルで判断しているかが見えてくる。
ポール・ジョージは7月6日(米東部時間)にトレードボーナスの390万ドルを放棄してキャップヒットを5410万ドルに抑えた。外から見れば「ボストンが動いた」大きなニュースだが、それでもキャップの余白はほとんど変わらなかった。実際にタックスラインを動かしたのは、ジョージのボーナス放棄ではなくバントンの放出だった。しかもバントンの280万ドルは非保証分で、セルティックスは6月29日(米東部時間)に一度チームオプションを行使していた。当初はマルチプレーヤートレードの材料として手元に置いていたが、ミッチェル・ロビンソンをフルミッドレベル・エクセプションで獲得した時点でファーストエプロンのハードキャップが発生し、トレード材料としての用途は大きく狭まっていた。
なぜ今、バントンだったのか
CelticsBlogは7月1日(UTC)の時点で「ボストンはオープンなロスター枠を好む傾向があり、バントンを外すのが最も現実的だろう」と書いていた。その仮説が一週間足らずで現実になったわけだが、注目したいのは放出の事実そのものより、この動きが示す優先順位の転換だ。
ブラッド・スティーブンスは7月6日の会見でこう語った。「キャップの70%と高すぎる使用率の割合が、二人の選手に集中していた。そのパスはかなり険しいものに見えた(The path looked a little bit more challenging with 70% of our salary cap, and such a high percent of our usage tied into two players)」。ジェイレン・ブラウンをフィラデルフィアへ送った理由をこの一文で語り切ろうとした。ビル・チザムも同じ会見で「これはすべて勝つことが軸にあり、私たちのプロセスを信頼した(This was all about basically trying to win, and really trusting in our process)」と続けた。
スティーブンスはさらに、今回のトレードで得た指名権について「どちらも大きな可能性を持っている(Both offer potential big swings at the apple)」としながらも、最後には「選手層を作り、最終的に求めるチームを構成するための小さなステップが多くある(there's a lot of small steps to build out the depth and team that we ultimately want to)」と付け加えた。「大きな一手」の話をしながら、同じかそれ以上の比重で、選手層を地道に埋める工程を次の課題として語っていた。バントンの放出は、その「小さなステップ」の最初の一つだ。
ロビンソン獲得で生じたハードキャップの制約を並べると、今のボストンに残っている自由度の形が変わって見える。「まとまった額の選手をもう一人足す」ではなく、「14人を維持するか、安く機能する15人目を選ぶか、ツーウェイとエキシビット10のどこに投資するか」という方向に絞られている。スティーブンスが繰り返した「柔軟性」という言葉は、もはや大型取引の余地を示す修辞ではなく、最後の一枠をどう使うかという運用レベルにまで降りてきた。
サマーリーグ初戦で見るべき審査
7月8日(米東部時間)にはサマーリーグのロスターと日程が発表された。16人の構成で、昨季の本隊で先発経験があったのはヒューゴ・ゴンザレスだけ。クリス・セナック・Jr.、ディロン・ミッチェル、ジョン・トンジェ、ミロス・ウザン、タッカー・デブリーズ、アマリ・ウィリアムズらが並ぶ。初戦は7月10日午前10時(日本時間)、トロント・ラプターズ戦だ。
NBC Sports Bostonは7月2日(米東部時間)の時点で、クリス・セナック・Jr.とディロン・ミッチェルは「ほぼ確実にメイン(Gリーグ)でシーズンを過ごす(almost certainly spend the season in Maine)」と整理し、ジョン・トンジェはアンリストリクテッド・フリーエージェント、アマリ・ウィリアムズはすでにツーウェイ契約を結んでいると示している。WEEIの分析では、ディロン・ミッチェルがもう一枠のツーウェイを取る見通しのなか、トンジェはウザンやデブリーズのようなエキシビット10組と「次の一枚」を争う立場に置かれている。
勝敗そのものを追う必要はない。初戦のラプターズ戦で確認したいのは、誰がゲームの終盤にコートに残るか、誰がクラッチタイムにボールを持たされるか、という起用の優先順位だ。トンジェが得点を積み上げるだけでなく再契約候補として扱われているか。ウザンやデブリーズが判断役として試されているか。アマリ・ウィリアムズが純粋なビッグとしてではなく、つなぎ役として使われているか。そういった起用の文脈から、フロントが今どんな機能を安い枠に求めているかが浮かぶ。
今回のサマーリーグロスターを眺めると、ボールを前に運べるガードと、補助的なシュートと判断を足せるウィングが多い。ブラウン放出後のメインロスターを踏まえれば、フロントがどちらの機能不足をより切実に感じているかが、初戦の起用の優先度から読み取れるはずだ。
「柔軟性」が降りてくる先
今のセルティックスを読む上で引っかかるのは、フロントが「交換で得た」と説明した柔軟性が、実際にはどの場面でどんな形をとるかという点だ。ブラウン対ジョージの比較をもう一度なぞるより、その柔軟性の実体を追う方が、今は読み違えにくい。
バントン放出は、タックスライン・ハードキャップ・15人目・ツーウェイという細部にまで判断が降りてきたことを示した。スティーブンスとチザムが会見で語った「小さなステップ」が、今まさに積まれている最中だ。そしてその審査の最前線が、今日から始まるサマーリーグにある。
上の数人の比較より、下の数人にどんな役割を与えるかの方が、今の編成の本音が見えやすい。ラプターズ戦での起用順は、その最初のシグナルになる。