マズーラがロビンソン獲得に使った「ハックは賞賛」という口説き文句
かつて自ら仕掛けたロビンソンへのハック戦術を、マズーラは口説き文句に転用していた。クエタの延長契約が2027-28シーズンから始まる変則構造と合わせ、ボストンのセンター陣がどんな時間配分で組まれようとしているのかを読む。
ミッチェル・ロビンソンをニックスから引き抜いた経緯について、ジョー・マズーラが語った一言が面白い。「I told him (the fouling) was a compliment. He was so effective when he's on the floor. So, now we have to be able to use his effectiveness to make us better(ファウルをされるのはリスペクトの証だと伝えた。彼はコートにいるだけで絶大な効果を発揮していたから、相手はそうせざるを得なかったんだ。今度はその効果を、我々を強くするために活用する番だ)」。ロビンソンのフリースローが得意でないことは知られており、相手チームは意図的なファウルで彼をコートから遠ざけようとしてきた。マズーラはその弱点攻めを逆手に取り、フリースローの下手さではなく、ロビンソンがいるだけで相手を狂わせてきた事実の方を口説き文句にした。
この発想は、ボストンがロビンソンをどう使うつもりかという問いにそのまま繋がる。マズーラは同じインタビューで、ロビンソン加入によってセンターの選択肢が増えたことを、こう説明している。「it gives us a ton of depth at the center spot where two guys have done so many great things for us, (Neemias Queta) and Luka (Garza). And now we have another guy that can help us(すでに素晴らしい働きを見せてくれているニーミアス・クエタとルカ・ガルザの二人がいるセンターのポジションに、とてつもない厚みが加わった。我々を助けてくれる選手がもう一人増えたということだ)」。ロビンソンを単独のスターターとして固定するのではなく、クエタとガルザを含めた複数のセンターで時間帯を分け合う前提が、この発言には表れている。
相手の反則を無効化する時間の使い方
ロビンソンの弱点であるフリースローが相手のハック戦術を誘発する以上、彼をコートに置く時間帯そのものが戦術的な選択になる。クォーター序盤にロビンソンを起用してリムでの物理的な優位を確立し、相手のチームファウルがボーナスに近づく前にクエタへスイッチする、という時間配分は、マズーラの発言から浮かぶ自然な読み方だ。ただしこの具体的なローテーションが実際に採用されるかどうかは、まだプレシーズンで確認されていない。マズーラの言葉から支持できるのは、ロビンソンの弱点を消す前提でクエタとガルザとの併用を想定している、という部分までであり、時間帯を厳密に区切る運用そのものは推論に留める。
クエタの延長契約が始まるのは今季ではない
このセンター陣の厚みを長期的に支えるのが、ニーミアス・クエタの延長契約だ。エージェントのビル・ダフィーがESPNに明かした内容によれば、契約は4年総額5600万ドルの完全保証で、クエタを2030-31シーズンまでボストンに留める。ここで見落としやすいのは適用の順番で、ボストンはまず2026-27シーズンの267万ドルのチームオプションを行使し、この新たな4年契約は2027-28シーズンから始まる。つまり今季のクエタの給与自体は変わらず、来季から新しい契約に切り替わるという変則的な構造になっている。昨季75試合に先発し、MIP投票で4位に入った実績が、この長期コミットメントの根拠になっている。
ロビンソンの契約規模も明らかになっている。3年総額4740万ドル、3年目はプレイヤーオプションという条件で、ニックスがオファーできなかった規模のオファーをボストンが出した形だ。ニックスは昨季のチャンピオンでありながら、オーナーのジェームズ・ドーランが第2エプロン超過を避けたため、同地区のライバルからロビンソンを奪われた、という構図がSports Illustratedの報道で描かれている。球団公式では契約条件を非公表としているが、キャップ計算上はこの3年4740万ドルが基準になっている。
ロビンソン、クエタ、ガルザという3人のセンターを抱えることは、単に頭数を増やしただけではない。クエタの延長が来季から発効する構造上、今季はクエタを267万ドルという安価なチームオプションで手元に置けるため、センターの層をリーズナブルに維持でき、来季以降に段階的に負担が増える設計になっている。マズーラがロビンソンを「効果を利用する」と語ったのも、単発の補強ではなく、複数年にわたるセンターのやり繰りを見据えた発言として読める。
この週にはサマーリーグの全日程も終了し、ミロス・ウザンとタッカー・デヴリーがエグジビット10契約を正式に締結、ボストンの契約下の選手は17名になった。センター陣の話とは別枠だが、ロスター全体をハードキャップ下でどう組むかという同じ財政的な視点が、この人数管理にも通じている。
実際にロビンソンとクエタが時間帯でどう組み合わされるかは、プレシーズンのゲームで初めて確認できる。マズーラの発言はセンター陣の厚みを増やす意図までは明確に示しているが、具体的な起用パターンはまだ言葉として出てきていない。