76ers戦 第2戦で見えた勝敗以上のシグナル
第1戦で32点差の圧勝を飾ったセルティックスが、わずか2日後にホームで111-97と完敗。単なるシュートの不調に留まらず、ドロップ・カバレッジの構造的な脆弱性、ビッグマン陣の機動力不足、そしてシステムへの硬直した信頼が露呈した第2戦を多角的に読み解く。
第1戦の32点差という歴史的な大勝の余韻は、わずか2日で上書きされた。4月22日(JST)、セルティックスはホームのTDガーデンでフィラデルフィア・76ersに97-111で敗れ、イースタン・カンファレンス1回戦のシリーズは1勝1敗のタイへと引き戻された。
ゲーム序盤、ジェイレン・ブラウンがアデム・ボナ越しに強烈なワンハンドダンクを叩き込み、セルティックスが16-0のランを見せた時点では、第1戦の再現が期待された。しかし終わってみれば、セルティックスの3ポイントシュートは47本中13本成功(27.6%)に沈み、対する76ersは39本中19本成功(48.7%)と外角で圧倒した。さらにターンオーバーは8本から13本へと増え、そこから相手に16得点を与えている。
この試合を「シュートが入るか入らないかのバリアンス」だけで説明することは容易だ。ただ、数字の内側に目を向けると、そこには勝敗以上のシグナルが積み上がっている。
ドロップ・カバレッジが突かれた構造
最も重要な論点は、セルティックスの守備スキームにある。ジョー・マズーラHCはピック&ロールに対し、ニーミアス・ケータやニコラ・ブーチェビッチといったビッグマンをペイント内に深く下がらせるドロップ・カバレッジを徹底した。目的はペイントの保護であり、76ersのペイント内得点は第1戦の45点から32点へと確かに減少している。
だがその代償は大きかった。ペリメーターのディフェンダーはスクリーンをかけられた後、独力でプルアップシューターを追いかけなければならない。スピードのあるタイリース・マクシーとVJ・エッジコムに対して、次々とオープンスペースが生まれた。
エッジコムへの対応には特に明確な誤算があった。セルティックスはマクシーとポール・ジョージに警戒を集中させ、ルーキーのエッジコムには意図的にスペースを与え、「外から打たせる」というギャンブルに出た。エッジコム自身が試合後に「彼らは私にシュートを打たせたがっていた。私たちはどこからシュートが生まれるか分かっていた」と語っているように、76ersはこのギャンブルを見事に逆手に取った。背中を強打して一時ロッカールームに下がるアクシデントがありながらも、復帰した第2クォーターだけで16得点を記録し、試合の流れを完全に変えてみせた。
最終的にエッジコムは30得点・10リバウンド・3ポイント6本成功という歴史的な数字を残し、1998年のティム・ダンカン以来となるプレーオフでの30得点・10リバウンドを達成したルーキーとなった。マクシーも29得点・9アシストと並走した。
ジェイレン・ブラウンは試合後、「エッジコムは快適にプレーしすぎていた。彼はルーキーだが確かにプレーできる。我々はもっと上手く守らなければならない」と振り返っているが、これは個人の守備努力の問題というより、スキームが生み出した構造的な敗北と見るべきだろう。
かつてのセルティックスにはアル・ホーフォードという存在があった。ペリメーターまでスイッチして守り切る機動力を持つビッグマンが、ドロップ・カバレッジの限界を補っていた。彼がゴールデンステイト・ウォリアーズへ移籍し、クリスタプス・ポルジンギスも不在の現在、インサイド陣の守備範囲の狭さはマズーラHCの采配の幅を目に見えて狭めている。今季途中に加入したニコラ・ブーチェビッチは18分の出場で9得点5リバウンドを記録したが、ピック&ロールの標的として繰り返し狙われ、ディフェンス面での機動力不足は隠しようがなかった。
第4クォーター残り6分の2分半
第4クォーター残り6分25秒、ブラウンのフリースローでセルティックスは89-91と2点差に迫った。だがここから76ersは11-0のランを作り、残り約4分で102-89と試合を決定づけた。
この約2分半でセルティックスのオフェンスが完全に沈黙した背景には、シュートの不調だけでなく、ニック・ナースHCが仕掛けたオフボールでのフィジカルな攻防がある。76ersのセンター、アデム・ボナはボールのないところでケータに対して激しいコンタクトを仕掛け続けた。目的は明確で、ケータが素早くスクリーンをセットするのを妨害すること。この泥臭い駆け引きによってセルティックスはオフェンスのセットアップに時間をかけざるを得なくなり、ショットクロックを浪費させられた。結果として苦し紛れのアイソレーションやタフなシュートに追い込まれ、オフェンスは完全に停滞した。マクシーの勝負強さが際立って見えた一方で、見えないところで行われていたフィジカルな駆け引きにおいても、セルティックスは明らかに後手を踏んでいた。
「システムへの信頼」が問われる局面
マズーラHCは第1戦の圧勝後、深いローテーションを採用した理由について「ファウルトラブルとしてではなく、我々のローテーションを回しただけだ。一年中やってきたことであり、これからも続ける」と語っていた。第2戦の敗戦後も「この敗戦は私について何も語っていない。チームについてすべてを語っている。我々にはシステムがあることを証明している」と述べ、戦術的判断をシステムへの信頼に帰結させている。
レギュラーシーズン56勝を支えたシステムが強力であることは疑いようがない。ただ、相手が弱点を徹底的に突いてくるプレーオフにおいて、「一年中やってきたこと」を頑なに貫くことが常に正解とは言い切れない。ジョエル・エンビードを欠く76ersが、ドロップ・カバレッジをプルアップで崩し、守備の穴をアイソレーションで執拗に狙い撃ちにする中で、柔軟なアジャストメントを施せなかったことは明白なシグナルだ。
システムが詰まった時に打開役として期待されるジェイソン・テイタムのコンディションも、もう一つの焦点である。テイタムはこの試合で19得点・14リバウンド・9アシストとトリプルダブルに迫るスタッツを残したが、シュートタッチは19本中8本成功(3ポイントは8本中2本)と本調子ではなかった。昨年5月に右アキレス腱断裂という重傷から驚異的な回復を見せた彼は、試合後に「気分は良い。月並みかもしれないが、プレーオフに戻ってこられただけで、毎試合自分の足でコートを歩き去ることができるだけで、少し勝ったような気分だ」と語っている。
この言葉には精神的な成熟と現状への深い感謝がにじんでいる。同時に、まだ完全な状態へ向けて積み上げている途上にあるという現実も、静かに示している。かつてのように、システムが詰まった局面でテイタムの個人技に全てを委ねるような選択肢は、今のセルティックスには取りにくい。ブラウンがFG11/24、3ポイント5/12で36得点とMVP級のパフォーマンスを見せた一方、デリック・ホワイトとペイトン・プリチャードが合わせて12得点に封じ込められた現状では、二人のスターへの依存度を下げる工夫も求められる。
第3戦、問われる柔軟性
シリーズはフィラデルフィアへ舞台を移す。セルティックスが「次はシュートが入るはずだ」という楽観論だけを拠り所にするなら、それは危うい。
ニック・ナースが率いる76ersは、ジョエル・エンビード不在という危機的状況の中でマクシーとエッジコムに明確な役割を与え、それを遂行させた。対するセルティックスには、ビッグマンの起用法の見直しと、ドロップ一辺倒からの守備スキームの再構築が求められる。
レギュラーシーズンを勝ち抜いたシステムへの信頼は強みであり、その一方でプレーオフでは足かせになり得る。第2戦の敗北は、マズーラHCとセルティックスに対して「戦術的柔軟性」という問いを突きつけた。そのシグナルを真摯に受け止め、アジャストできるかどうかが、シリーズの行方を左右する。