Bucksが求めたゴンザレスとシャイアマン、断ったブラッド・スティーブンス
ヤニス・アデトクンボ交渉が破談した理由は延長契約の金額ではなく、バックスが要求したヒューゴ・ゴンザレスとベイラー・シャイアマンの譲渡をブラッド・スティーブンスが拒んだことだった。守った若手の起用プランと、税ラインを跨いだ財務調整が同じ夏に重なっている。
ヤニス・アデトクンボの獲得交渉が土台から崩れた理由について、7月16日にシャムズ・シャラニアが伝えた内容は、これまで語られていた筋とだいぶ違う。オーナー陣がスーパーマックス延長の支払いを渋ったという推測が広がっていたが、シャラニアはそれを明確に否定し、破談の引き金はバックス側の要求そのものだったと説明した。
「The Celtics did not want to give up Hugo Gonzalez and/or Baylor Scheierman and another draft asset when the Bucks asked for that. For my reporting, that was the breakdown in that conversation.(Bucksがそれを求めたとき、セルティックスはヒューゴ・ゴンザレスやベイラー・シャイアマン、さらに別のドラフトアセットを渡す気がなかった。私の取材では、そこが交渉決裂の原因だ)」。ジェイレン・ブラウンと複数の1巡目指名権に加え、若手2人まで求めたバックスの提示を、ブラッド・スティーブンスは固辞した。金額の問題ではなく、誰を渡すかの問題だったという骨格がここで一段はっきりする。
この拒否が単なる資産保護の建前でないことは、サマーリーグでの起用方針を見ると分かる。サマーリーグでヘッドコーチを務めるアミール・ジェファーソンは、ゴンザレスに課している役割を「ボールへのプレッシャー、機会があればプレス、プレイメイカーとしての振る舞い、絶え間ないリバウンド参加、オープンでのシュート、ボールムーブ、そしてスクリーン」と列挙し、「Obviously, we're asking him to be himself in a bigger role, but we're not asking him to do anything that I don't think he can do every time he steps foot on the court. ... That's what we're going to ask him to do with the Celtics, too.(もっと大きな役割の中で自分らしくあることを求めているだけで、コートに立つたびにできないはずのことは求めていない。セルティックスの本隊でも同じことを求める)」と語っている。サマーリーグの練習項目がそのまま本隊の要求に直結しているという言い方は、ゴンザレスをオプションとして温存しているのではなく、既にローテーションの設計図に書き込んでいることを示している。バックスの要求を蹴った代償として若手を守ったのではなく、守った若手に具体的な出番を用意しているという順番で読むべき材料だ。
170万ドルの余白
同じ時期に進んだキャップ操作も、行き当たりばりの節約ではなく数字の詰めが伴っている。ポール・ジョージが自身の契約に含まれていた390万ドルのトレードキッカー(トレード成立時に発生するボーナス)を自発的に破棄し、無保証契約だったダラノ・バントンを7月9日にウェイブしたことで、セルティックスはラグジュアリータックスの基準額2億42万8000ドルを約170万ドル下回る位置に立った。ミッチェル・ロビンソンの獲得で第1エプロンにハードキャップされている以上、タックスラインの回避そのものは選択肢が限られる調整だが、この170万ドルの隙間は単に税を避けるだけの結果ではない。ドラフト40位指名のディロン・ミッチェルをツーウェイ契約ではなく、ルーキーミニマム(約140万ドル)でスタンダードロスターの15人目に引き上げても、タックスラインを超えない財政ルートがここで初めて確保された形になる。守備指標に評判のあるミッチェルをどの枠で本契約に落とし込むかは、バントン放出の数字が決めた選択肢の中にある。
この一連の財務調整は、外からは「新オーナー陣がコストを優先している」という見え方をされやすい。ザ・ボストン・グローブのダン・ショーネシーは、ジェイレン・ブラウン放出を「勝つことより財務を優先している疑念を抱かせる最悪のトレードの一つ」と評しており、プライベート・エクイティ出身のビル・チザム体制への不信は根強い。ただ、ゴンザレスとシャイアマンを渡さなかったという事実と、その170万ドルをミッチェルの契約枠へ充てる計算を並べると、この夏の動きは単純な支出削減ではなく、守るべき若手と、伸ばすべき若手の両方に的を絞った配分に見える。ジェイソン・テイタムがESPY賞の会場で「You understand throughout the course of your career that the NBA is a business... But it doesn't make it any easier.(キャリアを通じてNBAがビジネスであり、人が移籍していくものだとは理解していく。それでも、だからといって楽になるわけではない)」と語り、ジョー・マズーラも「grieving process」が必要だと認めたのは、ブラウンを失った痛みが本物であることの証言であり、フロントの計算とは別の層で存在している。両者は矛盾せず、チームがどこに賭けているかを別の角度から見せている。
ディロン・ミッチェルの最終的な契約形態と、2760万ドルのTPEが期限までに使われるかどうかは、まだ確定していない。バントン放出でTPEを絡めたトレード運用は難易度が上がったと見られており、この枠が眠ったまま夏を終える可能性は低くない。