ブラウン不在時のプリチャードが叩き出した27得点、8アシスト
ジョー・マズーラは「ブラウン放出への介入はなかった」と述べ、ブラッド・スティーブンスへの信頼を語った。同時に、ブラウン不在時に75ポゼッション換算で27得点、8アシストを記録していたペイトン・プリチャードの存在が、今回のトレードを支えた分析的な合理性を裏付けている。
サマーリーグの会場となったUNLVで、ジョー・マズーラがジェイレン・ブラウンのフィラデルフィア・セブンティシクサーズ移籍後、初めて報道陣の前に立った。まず口にしたのは、自分がこの決断に加わったかどうかという問いへの明確な否定だった。
「Not input, just -- Brad comes to you and talks to you and gives you a breakdown and an understanding...I think Brad [is one of] the absolute best at what he does, and there's just a level of trust that you have.(意見を挟むのではなく、ブラッドが来て話をして、分析と理解を共有してくれる。こういう局面では、ただ耳を傾け、信頼し、彼らの仕事を理解することが重要だ。ブラッドはその道で間違いなく最高の一人であり、そこには絶対的な信頼がある)」。続けて、放出した選手を単なる駒として扱わない姿勢も示した。「There needs to be a grieving process for losing not just a player in Jaylen, but a person in Jaylen(ジェイレンという選手だけでなく、ジェイレンという一人の人間を失ったことに対する、喪失を受け入れるプロセスが必要だ)」という言葉は、編成の決定と現場の感情を意図的に分けて語る姿勢を映している。
この権限分離の発言と重なるのが、放出の裏付けとしてアナリストの間で広まっている数字だ。トム・ハバーストローは「Payton Pritchard in 861 minutes without Jaylen Brown last year averaged 27 ppg with 8 assists per 75 on 61% TS. The Boston Celtics believe that he's their in-house version of Jalen Brunson(ブラウン不在の861分間でプリチャードは75ポゼッション換算27得点、8アシスト、TS61%を記録していた。セルティックスは彼を自前版のジェイレン・ブランソンだと見ている)」と評した。ブラウン出場時のプリチャードが16.8得点、5.3アシスト、TS56.6%にとどまっていたことを踏まえると、この差は単なるサンプルの偏りでは説明しづらい規模になる。アイソレーション時のPPPでもプリチャードの1.11はブラウンの1.01を上回り、アシスト対ターンオーバー比は3.74対1.41という開きが報じられている。この数字がすべてを説明するわけではないが、フロントが「ブラウンよりプリチャードが優れている」という単純な比較ではなく、ボールムーブメントの効率という観点で編成を組み替えたという見立てを支える材料にはなっている。
財務面の非対称性も、この見立てに重みを添える。ブラウンのスーパーマックス契約は来季57.1Mドル、2028-29シーズンには65Mドルへ膨らむ一方、プリチャードは来季7.8Mドル、翌年8.3Mドルという契約でプレーする。フロントがプリチャードをブラウンより優れた選手だと結論づけたわけではなく、契約額に対して得られるものが際立って大きいという財務的な判断が今回の再編を後押ししたという説明は、マズーラが繰り返した「介入ではなく信頼」という言葉と噛み合う。決断の中身は現場ではなく編成側にあり、マズーラはその結果を受け止める立場に立っている。
この夏のもう一つの具体的な材料は、ディロン・ミッチェルのサマーリーグでの跳躍だ。ドラフト2巡目40位という指名順位からは想像しにくい爆発力を、シャーロット・ホーネッツ戦で見せている。大学時代の3ポイントは4年間を通して低調で、セント・ジョーンズ大での最終学年は15本中1本という極端な数字だったが、この試合では5本中2本を沈め、24得点、8リバウンド、6スティールを記録した。育成環境の中で最大の弱点とされてきたシュートに、早い段階で修正の兆しが出たという事実は、チームが今オフに賭けた若手投資が無駄になっていないことを示す傍証になる。ただし、彼をスタンダード契約の15人目として抱えるのか、Gリーグのメイン・セルティックスを軸にしたツーウェイ契約で育てるのかは、チームからまだ明かされていない。
マズーラの発言、プリチャードの数字、ミッチェルの跳躍は、それぞれ別の話に見えて、フロントが今夏に選んだ方向を別の角度から支えている。決断の主体をブラッド・スティーブンスに置き、ボールムーブメントの効率でオフェンスを組み替え、育成枠でも粘り強く伸びを見せる選手を抱え続ける。トレーニングキャンプでペイトン・プリチャードとデリック・ホワイトのバックコートがどう役割分担されるか、そしてポール・ジョージの体調がどこまで整うかは、この方向性が実戦でどう機能するかを測る次の試金石になる。