ロビンソン獲得のフルMLEが縛るセルティックスの夏
かつて「ハックの標的」だったミッチェル・ロビンソンをフルMLEで獲得したセルティックスは、その代償として第1エプロンのハードキャップを背負った。トレイ・マーフィー3世やブラッドリー・ビールの噂が浮かぶ一方、その財政的な壁がどこまで動きを縛るのかを整理する。
かつてセルティックスがゲームプランの最優先事項に据えていたのは、ミッチェル・ロビンソンを試合から消すことだった。ESPNのブライアン・ウィンドホーストは、ボストンが過去の対戦でロビンソンに意図的にファウルを重ねる、いわゆるハック戦術を仕掛けていた経緯を明かしている。「Their strategy was like, no matter what, we've got to get Mitch out of the game; he is a wrecking ball to our game plan(とにかくミッチェルを試合から追い出さなければならない。彼は我々のゲームプランを破壊する存在だ、というのがセルティックスの戦略だった)」。ロビンソンと当時のニックスの組み合わせは、こぼれ球を五分五分ではなく六対四で拾い切る強さを持っていたとウィンドホーストは言う。そのぶつかり合いを毎年繰り返してきたチームが、今夏そのロビンソンを自陣営に引き入れた。
7月6日付でボストンが正式契約を結んだロビンソンの条件は3年4738万8600ドル。3年目はプレイヤーオプションで、完全な保証契約ではない。この獲得に使われたのがチームの非納税者向けミッドレベル例外条項、いわゆるフルMLEだ。ここに今夏最大の制約が仕込まれている。フルMLEを行使したチームは、今シーズン中どんな理由があっても第1エプロンのサラリーラインを超えることを許されない。タックスを払えば超えられる通常のソフトキャップとは違い、これは1ドルでも超えれば成立しないハードキャップであり、トレードでも新規契約でも例外がない。ロビンソンの守備力と35分換算で7本を超えるオフェンスリバウンドを買うために、ボストンは自らの動ける範囲を先に狭めたことになる。
このハードキャップが、いま浮かんでいる二つの噂の行方を実質的に決めている。The Athleticのジョン・ホリンジャーは、ペリカンズのトレイ・マーフィー3世をブラウンのトレードで得た指名権と組み合わせるシナリオに言及した。ブラウンを76ersへ送った対価としてボストンが得たのは2028年1巡目、2031年1巡目(PHI)、2028年2巡目、2030年2巡目という指名権パッケージで、ペリカンズの要求も1巡目4本から3本まで下がってきているという。マーフィーは26歳で昨季平均21.5得点、3P成功率37.9%を記録した選手だが、現在の契約は4年1億1200万ドル、今季のキャップヒットは2700万ドルに達する。指名権だけではこの金額を吸収できず、同等のサラリーを持つ主力を出す枠組みが必要になるが、その部分はまだどこにも示されていない。
ブラッドリー・ビールの噂はさらに輪郭がはっきりしている。Bleacher Reportのジェイク・フィッシャーは「I would not rule out Boston for Beal because of the connection with Jayson Tatum(ジェイソン・テイタムとの関係があるため、ビールの移籍先としてボストンを除外することはない)」と述べ、同郷のテイタムとの結びつきがボストンを候補に残していると説明した。ただしフィッシャー自身も「Beal's decision is not exactly being held up by LeBron, but is being impacted by it(ビールの決断はレブロンに縛られているわけではないが、影響を受けている)」と留保をつけている。ボストンは現在タックスラインからわずか170万ドル下にあり、ビールをベテランミニマムで獲得してもそこを超える。しかもフルMLE使用による第1エプロンのハードキャップがある以上、サム・ハウザーの残り3年4500万ドルを放出してキャップをリセットしない限り、登録自体が難しいという指摘が出ている。同郷の縁がある噂と、それを実行するための具体的な財源が噛み合っていない状態が続いている。
この夏の緊張感を後押ししているのが、レブロン・ジェームズが2年800万ドルのベテランミニマムで76ersに加わったという事実だ。前季の年俸5300万ドルから大幅な減俸を受け入れた決断で、ジョエル・エンビード、タイリース・マクシー、そして今夏ボストンから移った当のジェイレン・ブラウンにジェームズが加わり、東カンファレンスの障壁は一段厚くなった。フランチャイズレジェンドのセドリック・マックスウェルが「I don't see how you remove him and all of a sudden you become better(ブラウンを外していきなり強くなるとは思えない)」と漏らしたのも、この巨大化したライバル像を前提にした反応だ。ただしこの巨大化は、ボストンの第1エプロンによる制約そのものを変えるものではない。感情面の圧力は増しても、財政上の壁は同じ場所にある。
先発センターの座がロビンソンとニーミアス・クエタのどちらに落ち着くのかも、まだ明言されていない。クエタは昨季75試合に先発し4年5600万ドルの延長契約を結んでいる選手であり、キャンプでの競争を経て決まる話だ。ロビンソン獲得によって空いたはずの余白の多くが、実は次の一手を縛るために使われてしまったという構図の中で、10月10日のTDガーデンでのプレシーズン、76ers戦を含む今後の数週間は、ビールとマーフィーの噂がどこまで実体を持つのか、そしてハウザーの去就がどう動くのかを見極める材料になる。