ロビンソン加入で第1エプロンにハードキャップされたセルティックス
ミッチェル・ロビンソンとのフルMLE契約でセルティックスは2026-27シーズンを通じて第1エプロンに縛られる。同じ週に届いたドン・ネルソンの逝去は、ジョー・マズーラ体制が受け継ぐスペーシング志向とロビンソンの起用がどこまで噛み合うかという、新たな問いを投げかけている。
ミッチェル・ロビンソンとの3年総額約4,738万ドルの契約は、単なるセンター補強として片づけられる話ではない。この契約はフル・ミッドレベル特例を使ったものであり、CBAの規定によってセルティックスは2026-27シーズンを通じて第1エプロン(2億901万5,000ドル)でハードキャップされることが確定した。ジェイソン・テイタム、ポール・ジョージ、デリック・ホワイトの高額契約に加えてロビンソンのキャップヒット1,504万4,000ドルが乗ることで、チーム総年俸はすでにタックスラインを上回っている。シーズン中のトレードでは受け取る年俸が放出する年俸を1ドルでも超えることが許されず、バイアウト市場での動きも狭まる。ロビンソン獲得は補強であると同時に、フロントの選択肢を自ら削る一手でもあった。
その数日後に届いたのが、ドン・ネルソンの逝去だった。8月9日、家族とゴールデンステイト・ウォリアーズからの声明で、ボストン・セルティックスの選手として5度の優勝を経験し、NBA歴代2位となる1,335勝を挙げたネルソンが86歳で亡くなったことが確認された。ゴールデンステイト・ウォリアーズの現ヘッドコーチであるスティーブ・カーは「現代のNBAで当たり前となっている戦術の多くは、ネリーのゲームへのアプローチにまで遡ることができる」と評し、ネルソンが作った「ネリー・ボール」がリーグ全体に残した設計を振り返った。ルカ・ドンチッチとステフィン・カリーもそれぞれ追悼の言葉を寄せており、カリーは「ルーキー嫌いと言われていた彼が、初日から私に挑戦し、コート上で最高の自分になる機会を与えてくれた」と振り返っている。ネルソンが持ち込んだポジションレスと広いフロアの発想は、今のジョー・マズーラ体制が極端な3ポイント試投数と5アウト・スペーシングで表現している方向性と、系譜としてはつながって見える。
問題は、その系譜の延長線上に置いた新戦力が、系譜そのものと相性の良い選手ではないという点だ。ロビンソンのキャリアにおける3ポイント試投数はほぼ皆無で、オフェンス面の貢献はリング周りのプットバックとアリウープに限られる。フリースロー成功率もキャリア通算で低く、勝負所でファウルを誘発される展開になれば、フロアを広げる設計そのものが窮屈になる。ハードキャップという制約の下で獲得した戦力が、チームが積み重ねてきたオフェンスの前提と正面からぶつかる可能性を抱えているという点で、この補強は単純な穴埋めでは終わらない。
もっとも、フロントがこの噛み合わせの悪さを見落としているとは考えにくい。ニーミアス・クエタやルカ・ガーザといった安価な控えセンターとの併用が前提にあり、ロビンソン単独でフル出場時間を任せる設計ではない。第1エプロンに縛られた財務状況の中で、リムプロテクションを確保する手段として、高額なトレードターゲットを追うよりロビンソンとクエタの併用に約1,770万ドルを投じる方が費用対効果に優れるという見方も成り立つ。ただしそれは、プレシーズンでマズーラがどこまで二人を使い分け、勝負所でロビンソンを外す判断をためらわないかによって初めて確認できる話であり、契約書の上だけでは決着しない。
今季のセルティックスは、ネルソンが敷いた戦術の延長線上にいながら、その延長線とは違う選手を、より狭い財務の枠の中で使わなければならない。ロビンソンの出場時間がプレシーズンでどう振れるかは、マズーラがこの矛盾をどう畳み込むかを示す最初の手がかりになる。